バランスシート攻略術③ 過大な設備投資は命取り!

こちらは、前回記事からの続きとなります。未読の方は下記記事を先に読まれてください。

前回記事はこちら|バランスシート攻略術②『売掛金・在庫管理』について

さて、今回はバランスシート攻略術の中でも「設備投資」について詳しく解説していきます。

  1. 売掛金
  2. 在庫管理
  3. 設備投資 ⇦ココ!
  4. 貸し倒れ
  5. 利益不足
  6. 経費

バランスシート(またの名を賃借対照表)を実務で経営に活かせていない“もったいない”経営者の方が多いというお話は常々していますが、今回の件についても重要ですので、押さえておきましょう。

設備は絶対に持ってはいけないのか?

診断士さやか
中小企業経営者の高濱社長から、こんな質問をいただきました♪
高濱社長

商売をする以上、売上を伸ばし規模を拡大したいと社長なら誰しも考えると思います。

しかし、そのためには設備投資もしなくてはなりません。

経営学をかじった経営者仲間は、口を揃えて「設備は持つな」と言います。

設備投資はしてはいけないのでしょうか?

企業の資金繰りが行き詰まったり、経営が破綻したりする原因は、実は設備投資の失敗が原因であることがとても多いのです。

器械や不動産など、いわゆる「設備」と呼ばれるものはバランスシート(賃借対照表)で「固定資産」に分類されますが、企業経営では、この固定資産に特に注意を払わなければなりません。

ちなみに、高濱社長の相談にあるような、固定資産は『絶対に持ってはいけない』というものではありません。

事業を行う上で、ある程度の投資が必要な場合ももちろんありますし、大切なのは設備投資をする上で“投資金額を見誤ってはならない”ということです。

製造業なら工場を拡大しなければならない時もあるでしょうし、小売業でも店舗にお金をかけなければならない場合もあるでしょう。

問題は、その「投資」をきちんと回収できるのかどうか?という部分にあります。

投資として資金を投入する以上、絶対に回収しなければなりません!

設備投資の回収手段は?

回収手段はもちろん、「利益」です。

例えば、設備投資を行うことにより、利益が毎月100万円上がるとしましょう。

もし、設備投資の金額が3,000万円だったら、回収するまでに30ヶ月かかります。

設備投資が6,000万円だったら、倍の60ヶ月かかる計算になります。

※これは全てキャッシュで投資した場合です。実際には融資で投資することが多いでしょうから金利がプラスでかかります

当たり前のことですが、回収は早い方が良いに決まっていますから、同じ収益が見込まれるのであれば、いかに投資金額を少なくするか?がリスクを避ける近道となります。

さらに、収益見込みは、時として外れる場合があります。

100万円の利益が上がるはずが、やってみたら50万円しか上がらなかった・・・

なんてことが往々にしてあります。

つまり、投資を始める際には、収益計画が狂ったとしても耐えられるだけの金額に抑えておかなければなりません。

利益が50万円しか上がらなかったのに、投資金が6,000万円であった場合、単純計算で回収までに120ヶ月がかかるという事態に陥ります。

このことでも、初期投資の金額を少なくすればするほど、リスクを避けられるということがお解り頂けるのでしょうか。

設備投資が負担となって破綻してしまう企業は、多いということを上述しましたが、そういった企業の共通点は「会社が持っている投資額のキャパシティを見誤ってしまう」という部分にあります。

無計画な拡大路線をひた走り、課代な設備投資を行った挙句に倒産する企業が驚くほどたくさんあるのです。

あなたも経営者として設備投資を行う際には、慎重に慎重を期して、可能な限り投資額を小さくする努力を全力で行ってください。

「投資」と「回収」を1セットで計画する

ここまで読んでいただいた方であればお解りになる通り、「投資」の基本は「回収」までの段取りをセットで計画することです。

キャッシュを入れたからにはそれ相応の「見返り」が必要なのです。

会社でいうところの「見返り」とは、「収益」です。

収益を生まないような物件(案件)への投資は絶対にしてはなりません。

これだけは肝に銘じておいていただきたいことです。

設備投資の失敗例①

以前私のところに相談に来られた旅館業の秦野社長(仮名)を例にしますと、客室や浴場など、お客様が利用する設備は、きちんとコストをかけて綺麗にしておかくてはなりません。

それによってお客様の満足度が上がり、結果的に収益が増えるからです。

しかし、秦野社長は既存の旅館の設備がボロボロになっているにも関わらず、それを放置し、新規開拓に注力をして新しい旅館をどんどん設立しました。

結果的に、新しい旅館には「新しいもの好き」の新規客が入りますが、設備が風化してしまっている既存の旅館の客足は遠のいていきました。

当然ながら、巨額の投資金は新しい旅館の利益のみで賄っていくのは難しく、最終的には1店舗のみを残して、他全てを売却してしまう結果となりました。

設備投資の失敗例②

それから、別の例ですが、お客様と直接関係のない設備にお金をかけることも厳禁です。

いくら立派な自社ビルを建てたところで、それによって収益が上がるわけではないからです。(話題性はあるかもしれませんが)

実は、我々コンサルの中では有名な話ですが、赤字会社には必ず、立派な自社ビルと広い社長室があるという説があります。

工場拡大に多少無理な金額を突っ込むならまだしも、見栄や体裁に巨額の投資をしてしまうのなんてナンセンスなのです。

まとめ

ということで、シリーズでお送りしている「バランスシート攻略術」ですが、今回は『設備投資』について解説しました。

もし、あなたの会社のこれからの設備投資の計画の参考になれば幸いです。

そして、当記事で解説した通り、バランスシートを使用した事業計画のプランニングは事業拡大にとっても、会社の資金繰りにとっても超重要事項です。

大きな金額を投資する際には、常に最悪のケースを想定して動くようにしたいところです。

次の記事はこちら|バランスシート攻略術④ 予測不能⁉︎貸し倒れが発生した時の対処法

バランスシート攻略術④ 予測不能⁉︎貸し倒れが発生した時の対処法

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