キャッシュフロー計算書が金融機関対策のための資料ということはよくわかりました。
ところで、決算書の中に損益計算書というものがありますが、
この損益計算だけではダメなのでしょうか?
それと、損益計算書とキャッシュフロー計算書の違いがあまり理解できないので、
わかりやすく教えて頂けると助かります。
前回記事では、キャッシュフロー計算書が中小企業経営に於いてどのような恩恵をもたらしてくれるのか?について解説しました。
今回は、ご質問の損益計算書とキャッシュフロー計算書の違いについて解説します。
結論から言うと、決定的な違いは「作成する目的」です。
損益計算書とキャッシュフロー計算書の違い
損益計算書 | キャッシュフロー計算書 | |
作成目的 | 会社の経営成績を表す | 現金の流れ・量を表す |
---|---|---|
何がわかるのか | 会社の一定期間の利益 | 会社の生み出した現金の量とその原因 |
作成方法 | 複式簿記による帳簿から作成 | 収入・支出をを項目別に集計し作成(直接法) 損益計算書を元に加減算して作成(間接法) |
取引の認識 | 発生主義 | 現金主義 |
損益計算書では、一事業年度に獲得した利益額を算出することが目的となりますが、キャッシュフロー計算書では生み出した現金の量とその流れを表すことがその「目的」となります。
どちらも会社の経営状態を表す書類なので、混合してしまう経営者の方が多いのも事実です。
しかし、取引の認識の違いによってそれぞれ違う視点から会社の状態を捉えようとしているものです。
理解しづらい部分がありますので、例で考えていきましょうか。
(例)今期商品50万円を売り上げて、入金は来期というケース
売掛などのサイトによって、売上と実際の入金にタイムラグが生まれるのは、よくあることです。
このラグの対応が、損益計算書とキャッシュフロー計算書では異なってきます。
損益計算書での計上
損益計算書では、売上高として50万円を計上することになります。
損益計算書では、発生主義という「売上金の入金をしてもらう権利が確定した時点」で売上を計上するのです。
つまり、実際に入金されていようがいまいが関係ありません。
権利が確定したということがポイントとなります。
キャッシュフロー計算書での計上
損益計算書に対して、キャッシュフロー計算書では、今期の時点ではなんの処理も行いません。
キャッシュフロー計算書では「現金」が入金した時点で収入として計上するため、未入金の時点で収入を上げることはありません。
この点を考えると、『経営者の考えに近いのはキャッシュフロー計算書』で『経理の考えに近いのが損益計算書』ということが言えます。
決算書をめぐって経営者と経理担当者のいざこざ
経理担当者から「今期決算書で利益が出ています」と言われ、『そんなことはない。今期の業績は悪いはずだ』と不思議に思った経験はないでしょうか?
これは、別に経理担当者が処理を間違えているのではありません。
多くの経営者と経理担当者には、計上の「感覚」に差異があるのです。
参考:資金の増加と減少はなぜ起こるのか?経営者と経理担当者の話のズレの原因
前項の話の流れから、もうお気付きの方も多いと思いますが、この感覚の差異の原因は、この損益計算書とキャッシュフロー計算書の違いと同じ理屈から生まれるのです。
経理担当者としては、簿記に則った権利が確定した時点で収益を計上しますが、経営サイドとしては現金が収入として入った時点で収入として考えるという違いです。
この違いについては、経営者もよく理解しておくことが必要で、権利確定によって作成した損益計算書も、実際の現金入金とを元にしたキャッシュフロー計算書も、経営にとっては大切な「情報」なのです。
⇨損益計算書は採算性などを見るための指標として重要な資料です。
⇨キャッシュフロー計算書はキャッシュの流れを見るための指標として重要な資料です。
それぞれ、適材適所で必要書類なのだということを理解しておくことが大切なのです。
まとめ
ということで、今回は、多くの経営者が混合してしまいがちな「損益計算書とキャッシュフロー計算書の違い」について解説しました。
あなた(社長)の感覚値に極めて近いのは、現金の出入りを示しているキャッシュフロー計算書ですから、これを書類として第三者でも確認できる形にしておくことによって、経営者の強い味方となります。
世の中小企業社長は、「実際に、キャッシュフローが回っているのか?」を、感覚値に頼ってしまう傾向が強いので、社内の権利担当者や金融機関とも共有できるよう紙に落とし込むことは重要なことなのです。
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