具体的な資金調達の方法をケース別にお伝えているシリーズですが、赤字決算に悩まされている中小企業経営者の方は少なくはないでしょう。
赤字決済をしていると、銀行融資を受けることが黒字決済の会社と比較して当然難しくなります。では、決算期をズラすことにより、黒字決算できるとしたら?
このページでは、現状では赤字決算の会社が決算時期を変更することによって、黒字決算が可能になり、そのことによって金融機関から資金調達可能かどうかの具体例を解説します。
逆に2月は売上・利益ともに一番良い月です。
2月に決算期を変更すれば、黒字決算にすることができます(3月決算では赤字です)。
近々に融資を受ける必要があり、黒字の決算書を銀行に提出したいのですが、決算期変更により資金調達は可能でしょうか?
決算期変更による資金調達のために、その理由を明確に
結論から言うと、決算期を変更することによる資金調達はもちろん可能です。
しかし、決算期変更の理由を明確にしなければなりません。
「黒字にしたいから決算期を変更した」では、なかなか合理的な理由にはなりません。この場合は少し”濁して”「会計事務所の都合だから」といった具合にしておく方が無難でしょう。
多くの会社は、決算期を3月にしています。
そのため、3月決算期は会計事務所も多くの決算を抱えているため、なかなかきめ細かな指導を受けることができません。ですから、その理由を金融機関に提示した方が納得してもらえる可能性が高いといえます。
決算期変更の具体的手続き
決算期変更の理由を明確にし、金融機関に納得してもらえれば、実際に決算期変更の手続きを行います。
手続きの流れは、以下の通りです。
- 取締役会(株主総会)の開催
↓ - 役員(株主)決議を採る
↓ - 所轄税務署に決算期変更の届出を提出
御社の場合は、3月決算を2月決算にしますので、11ヶ月の決算となりますが、たとえば9月より以前の月に決算期を変える場合は注意が必要です。この場合、6ヶ月以下の決算となりますので、金融機関が融資の審査をする期間としては短すぎるという判断になります。
11ヶ月でしたら1ヶ月だけ少ないということになりますから、あまり問題にはならないはずです。
注意すべきは決算期変更後の経営
決算期を動かしたことにより、赤字決算→黒字決算という流れができ、資金調達(融資)ができる可能性は高まりました。
しかし、問題はむしろ今後です。
決算期変更後の具体的な事業計画を示すことの重要性
今期は決算期を変更することにより黒字を確保できますが、次年度からは再び12ヶ月の決算となり、黙っていれば元の赤字決算に逆戻りしてしまいます。(元々が赤字の会社なのですから、決算期をいつにしようと、12ヶ月で決算をすれば、元通りの赤字になるはずです)
つまり、今後の事業計画を示すことが重要になってきます。
これは3〜5年の中期計画で、年度ごとに計画を立て、確実に黒字が出せる体質に変えていけることを示さなければなりません。
ここで注意しなければならないのは、融資を受けるための計画ではなく、経営の羅針盤として使える計画にする必要があるということです。
ここを履き違えてしまうと、一旦は融資を受けることができても、実態を伴うことができず、やがては金融機関の信用を失ってしまいます。
決算期変更後の資金の流れにも要注意
決算期を変更することにより、資金の流れも変わってきますので、 その点も注意が必要です。
たとえば、申告納税時期は5月から4月に変わります。決算賞与も3月から2月に変更しなければなりません。
他にも、資金繰りの変わる部分はあらかじめ資金繰り表の作成をしてその流れをつかんでおく必要があります。
1ヶ月のズレは案外大きなものです。
決算期を変更することによるデメリットが生じるというのは良くないことですから、資金繰りや他の経理上・税務上のデメリットを押さえ、しっかりと備えてから決算期変更を実行するようにしましょう。