事業計画書が必要な理由は前回の記事でお伝えしましたが、実際に事業計画書を作成するとなると、手が止まってしまう経営者の方も少なくありません。
このページでは、事業計画書を作成するときのポイントと手順を「既存事業の場合」と「新規事業の場合」それぞれのケース別に解説しています。
今まで取引したことのない金融機関に融資の申し込みをしました。
そのときに、事業計画の提出を求められたので作成していますが、なかなかうまくいきません。
事業計画作成の手順とポイントを教えてください。
事業計画作成のための4項目
事業計画を作成するための手順としては、大きく分けて4つの項目が必要です。
- 経営の基本方針
- 年度の経営目標
- 利益計画
- 資金計画
基本的には①→④の順で作成します。
それでは、項目別に作成のポイントを見ていきましょう。
1. 経営の基本方針
事業計画を作成するにあたって、はじめに「経営の基本方針」を策定しましょう。
もしかしたら、『中小企業に”経営の基本方針”が必要か?』と疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、どのような規模の会社であっても 「経営の基本方針」はあるはずです。
現場で仕事を行なっていると、なかなか意識しづらいこともありますが、社長自身の事業への取り組み姿勢そのものが「経営の基本方針」であることが多いのです。
そして、そのことを紙の上に表現することが大切です。
そうすることで、従業員や取引先の会社の方などに、 自社の事業を遂行するについての考え方を伝えることができるのです。
2. 年度の経営目標
「年度の経営目標」とは、その年度に重点的に取り組む事業や目標を明確にすることです。※これも社長の頭の中にあるはずです
その頭の中のイメージを「経営の基本方針」と同じように、文字に置き換えましょう。
経営の基本方針は、事業年度ごとに変わることのない普遍的なものなのに対して、この「年度の経営目標」は具体的にその年度で達成すべき目標のことをいいます。
つまり、基本方針に則ったもので、より具体的な目標をここで示すことになります。
3. 利益計画
利益計画とは、その年度の売上目標と利益目標を明確にした書類です。
具体的には、予想損益計算書と予想貸借対照表を作成します。
作成方法は資金繰り予定表を作成するときに使用した、基礎データを使います。※詳しくは、資金繰り表の作成手順【入金予測篇】を参照願います。
資金繰り予定表の基礎データを基にして、翌事業年度に予想されるデータの変動要因を考慮し、予想損益計算書と予想貸借対照表を作成します。
作成した予想損益計算書は、そのまま予算として使用することもできます。
4. 資金計画
資金計画で作成する書類は、資金繰り予定表にもなります。
事業計画の資金繰り予定表は、自社で作成している従来の資金繰り予定表とほぼ同じです。
ただし、1点違うところがあります。それは、事業計画とリンクさせることです。
資金繰り予定表を単体で作成するのではなく、他の計画書とリンクさせて作成することにより、実現可能性が高まります。
作成にあたって、それぞれの計画書の整合性を取ることは難しい作業だともいえますが、その緻密な作業をしているからこそ、金融機関の信頼を勝ち取れるとも言えます。
新規事業の場合の事業計画書作成方法
店舗や厨房機器にお金がかかるので、金融機関からの借入を先日申し込みました。
そのときに、担当者から「事業計画書を提出してください」といわれ、作成しています。
作成するときのコツなどありますか?
新規事業の事業計画書の作成は、ここまでに解説した方法と基本的な構成は同じです。
しかし、新規事業ですから実績やデータがないため、追加項目や作成方法が異なる部分が出てきます。
新規事業の場合に追加・変更しておきたい項目
まず、追加項目は以下の通りです。
● 新規事業の事業計画追加項目 | |
事業概要 | ・これから始めようとする事業内容を説明 ・会社の方向性や事業展開の方向性 |
参入事業の市場 | ・なぜこの事業を始めるのか ・どのくらいの市場規模があるのか ・競合他社の分析など |
事業の独自性 | ・自社のセールスポイントや同業他社の対策 |
取扱商品内容 | ・どのような取扱商品 ・サービスの内容なのか ・価格 ・利益率 ・客単価 |
新規事業のリスク | ・その事業が立ち上がったときのリスク ・どのように回避するか |
経営者の経歴・経験 | ・経営者の経歴 ・その事業の経験など |
また、既存の事業とは異なる部分(変更部分)として、「利益計画」と「資金計画」があります。
● 新規事業の利益計画
従来の利益計画を作成する場合に必要なものは基礎データですが、新規事業の場合はその基礎データとなるものがありませんから、まず最初に作成するべきものは基礎データです。
その基礎データは、前述した追加項目の取扱商品や売上の予測から作成していきます。
例)飲食店の場合の基礎データの考え方
- 店の広さから客席を予想し回転率を決める
- 客単価を算出
- 1日あたりの予測売上を作成
- ×営業日数 = 月の予想売上金額
※また、原価率などは同業他社のデータなどを参考にして、自社商品の原価率を割り出すのもひとつの手
あくまでも予想だからといって、達成できない目標を掲げるのではなく、裏づけ根拠のある数字にする事が大切です。
● 新規事業の資金計画
新規事業でも、資金繰り予定表を作成することになります。
もちろん、事業計画とリンクさせなければなりません。(参考記事:事業計画と資金繰り表をリンクさせるための考え方と注意点)
既存事業での資金計画との最大の違いは、事業が軌道に乗るまで時間がかかってしまうということです。
そこで大切なのが、軌道に乗る前の資金繰り表と軌道に乗った後の資金繰り表を作成するということです。
事業が軌道に乗るまで、資金をショートさせない方策を盛り込んでおき、金融機関に示す必要があるからです。
金融機関に提出することを念頭に考えると、いかにリスクを回避して事業を継続していくのかを中心に考えると、良い計画書になります。