前回の記事では、バランスシートが経営における重要な鍵を握っているということと併せて、入金と出金の基本的な考え方についてお話ししました。
前回記事はこちら|バランスシート攻略術① 事業に活かすために最初に把握すべき箇所
なぜ、このような記事を書いているのか?というと・・・
バランスシート(賃借対照表)を自社の資金調達に活かせていない経営者の方が多いからです。
実は、この「バランスシート攻略術」で、あなたの会社の資金調達が必要な時期を予言することができますし、現状で資金が足りていないのであれば、その原因を突き止めることができます。
この項では、以下の6つのポイントの内、まずは上から2ポイントの攻略法を解説します。
- 売掛金
- 在庫管理 ⇦イマココ
- 設備投資
- 貸し倒れ
- 利益不足
- 経費
売掛金の増え方に注意!
早速、自分の会社の賃借対照表を見てみました。
売掛金が数千万円もあり、その金額の多さにびっくりしてしまいました。
この数千万円がもし手元にあったら、どんなに資金繰りが楽だろう・・・と思います。
当社の売掛金額は異常なのでしょうか?
数千万円という金額だけを聞くと、確かに驚いてしまうかもしれませんね。
ですが、この売掛金の金額が適正かどうかを考える時には、要約すると2つの視点からしっかりと判断する必要があります。
自社の売掛金額が適正か見抜く2つのポイント
- 昨年対比
- 月商対比
今回は、その考え方について一緒に考えていきましょう。
昨年と比較して・・・
あなたの会社が、毎年同じような業績ならば、決算書には毎年同じような金額の売掛金が残るはずです。
もし、業績はそう変わらないのに、売掛金が昨年と比べて極端に増えているようなら、明らかに「異常」ですので、その原因を追求すべきです。
そして、これといった理由もないのに売掛金が増えているようなら問題です。
会社に入ってくるキャッシュは変わらないのに、売掛金だけが増えている・・・という状態であるならば、資金繰りも苦しいはずですし、放っておいたらますます経営を圧迫します。早急に売掛金を回収する努力をすべき事例と言えます。
売掛金を早期に回収する手段として、ファクタリングがお勧めです。一度検討されてみてください。
月商と比較して・・・
売掛金は減らすに越したことはありません。
基本的に売掛金が増えるのは経営にとってマイナスに働きます。
しかし、唯一、売掛金が増えても許される場合があります。
それは、売り上げが伸びているときです。
「掛け」で商売をしている限り(つまり、現金商売ではない限り)、売り上げが増えれば当然売掛金も増えます。
このような場合は金融機関も、正常な売掛金の増加として判断してくれますから、問題にはされません。
では、その売掛金の金額が適正かどうかはどうやって判断すれば良いのでしょうか?
簡単に判断できる方法が「月商と比較する」という方法です。
例えば、「月末締め、翌月末入金」の売掛の場合、月末の売掛金残高は(きちんと顧客が支払ってくれる前提で)1ヶ月分のはずです。
「翌々月末入金」なら2ヶ月分が残ります。
通常のビジネスの場合、大抵は翌月か翌々月払いでしょうから、売掛金残高が月商の2ヶ月以内なら、まあ正常と言えます。
これがもし、4ヶ月分あったら問題です。
取りっぱぐれている売掛金があるか、焦げ付いている債権があるか、いずれにしろ異常な数字といます。
注意点
例えば、決算期末に大きな売り上げが上がった場合、一時的に売掛金が多くなり、異常な値になることがあります。
しかし、これは、正常な営業活動の中で発生したものなので、たとえ月商と比較して大きくても問題にする必要はありません。
このように売掛金の適正値を考えるときには、様々は要素を勘案する必要があります。
もちろん、自社の売掛金の金額が正常な値であっても、売掛金を減らす努力は常にしなければなりません。
今よりももっと回収を早めることができないか?様々な角度から工夫をする必要があります。
それは、会社のキャッシュフローを良くする働きですから、会社にキャッシュが入ってくれば期日は早ければ早いだけ良いのです。
経営者は常にそのことを頭に入れて自社の業務を見直すようにしましょう。
在庫をいかにコントロールするか?
「在庫はお金が寝ているのと同じ」
「在庫は減らさなければならない。いや、むしろ持ってはならない」
という話をよく聞きます。
当社の賃借対照表(バランスシート)には、2,000万円の在庫が計上されていました。
これだけのお金が寝て、無駄になっているということでしょうか?
上述した「売掛金」と同様、在庫も賃借対照表(バランスシート)の右側で調達した資金が、姿を変えて商売に使われているという例です。
そういう意味では、「お金が寝ている」と言えなくもありませんし、この事をよく「塩漬け」と言ったりもします。
しかし、一概に『2,000万円分の在庫があるからダメだ』とはならず、在庫金額を考えるときにも、まずは自社の在庫量が適正かどうかを判断しなければなりません。
わかりやすい指標として、その原則は「在庫は売上の1ヶ月分以内」ということです。なぜなら、もし売上の1ヶ月分以上の在庫があったとしたら、その月に必要のないものまで仕入れていたということになるからです。
必要のないものを仕入れることこそ、「お金の無駄遣い」になり、資金繰りを悪化させる原因と言えるでしょう。
佐藤社長の場合であれば、年商が2億4,000万円以上あれば、適正です。
在庫の量は「適正量」を維持することこそ大切
ところで、冒頭の「売掛金」の場合は、金額が適正であったとしてもさらに減らすことはできないか?と、努力する必要があると言いましたが、究極の理想は『売掛ゼロ』です。
すなわち、100%現金回収です。
その理想に近づけるように、経営者は自社の業務を見直していただきたいとご説明しましたが、在庫の場合は「減らせば減らすほど良い」とは言い切れません。
妙な言い方ですが、もし在庫がゼロになったら、そもそも「売る」ことができなくなるからです。
ちょっと、想像してみてください。
最近では、ネットで買い物することが当たり前になりつつある電化製品ですが、棚に一つも商品が並んでいなく、「注文票」と書かれたカードだけが並んだガランとした家電量販店に、誰が買い物に行くでしょうか?
在庫の管理はここが難しいところで、少なくてもダメなのです。多すぎず、少なすぎず、ちょうど良い量に在庫を収めることが、在庫管理の要締と言えますね。
「適正量」をリードタイムで管理する
在庫の量を「多すぎず」「少なすぎず」適正な量で管理するためには、在庫品目それぞれについて、リードタイムと売上動向を把握して管理する必要があります。
これを「単品管理」と言います。
例えば、A商品は月間2,000個売れて、リードタイムが2週間なので、残り1,000個になったら発注をかける。
B商品は月間500個売れてリードタイムが1ヶ月なので、500個になったら発注する・・・という具合です。
この場合、A商品の必要在庫数は2週間分、B商品の必要在庫数は1ヶ月分ということになります。
不良在庫を減らし、売れ筋商品を売り切る!
一口に「在庫」と言っても、商品ごとに適正在庫量は異なります。
商品それぞれに対応した管理ができるのが、単品管理の長所ですから、ぜひ活かしてみることをお勧めします。
さらに、この単品管理を導入することにより「不良在庫」の洗い出しもすることができます。
単品管理には売上動向のデータが必要ですが、もし3ヶ月も4ヶ月も売れていない商品があったら、この単品管理を実施する過程で発見できるのです。
不良在庫は、仕入れても全く売れていない商品ですから、これこそが「塩漬け」の状態です。
在庫管理で資金繰りを改善させるためには、この「塩漬けの不良在庫」をいかに減らすか?が重要です。
通常売れている商品は適正在庫を維持しつつ、不良在庫を早期に発見し、処理することができれば資金繰りは常に正常に保たれますし、資金が有効に活用されます。
ぜひ、この流れを元に自社の在庫管理に取り組んでいただければ幸いです。
まとめ
ということで、今回はバランスシート攻略法の2つのポイントである『売掛金』と『在庫管理』について伝授しました。
今回の記事を見ただけで、勘の良い経営者の方であれば、劇的にキャッシュフローを改善させることができるでしょう。
私は、多くの経営者の方と面談をさせていただく中で、常々感じることですが、良い経営者の方は「行動が早い」ということです。
ヒントだけで動く方が多いですね。
いやいや、社長!まだ話半ばですよ!
急ぎすぎです(笑)
と、これは悪い例ですが、これが一概にも悪いとも言えないところなんです。
良い経営者は、たくさんの失敗を経験しています。
そして、その多くの失敗例から学び、「前例」を元に新しい課題の判断をしているのです。
逆に、悪い経営者というのは、鈍足です。
考えに考え抜き、機を逃してしまうのです。
そして、「あれだけ考えて判断したのにダメだった・・・」と落ち込みます。
それではいけません。
たくさん失敗をする前提で、取り組んでいきましょう!
私自身もそうでしたから。
次の記事はこちら|バランスシート攻略術③ 過大な設備投資は命取り!
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