あなたは、会社資金をどのように管理しているでしょうか?
私は、年間30〜50件ほどの会社の資金調達(財務)コンサルをしますが、
資金繰りが必要な会社の共通点として、キャッシュの管理が曖昧で明記されているお金の用途がボヤけていることが多いです。
今回は、そんな資金繰りが必要な会社が苦戦している資金の色分けについてお伝えします。
資金の種類とは?
先日も、こんな質問をいただきました。
管理人タナカ様
いつも記事を興味深く拝見させていただいております。
資金繰りというのは、お金の出し入れについて管理するということだとはわかっているのですが、お金を管理すると言ってもお金自体に色は付いていないので、なかなか明確なイメージができません。
どのような形で管理するのが良いでしょうか?
この質問者さんがおっしゃるように、お金に色は付いていません。
が、逆に考えると、お金が色分けされていれば管理が簡単になるとは思いませんか?
色分けすることで資金の出し入れを明確化するのです。
実際にその色のつけ方ですが、基本は2色に分けて考えていきます。
その2色は以下の通り
- 運転資金
- 設備資金
運転資金とは?
運転資金というのは、会社を運営していく上で日常的に必要な資金のことを指します。
例えば、仕入れ代金や人件費、その他経費なども運転資金の枠に入ります。
運転資金の特徴として、お金の回転(支払いサイクル)が早いということが言えます。
通常の営業活動の中で発生する債権債務(受取手形・売掛金・支払手形・買掛金・未払金など)の回収・支払いの期間は、1年を超えることは稀です。
例えば、仕入れ資金であれば、毎月の支払いが決まっていることがほとんどですし、金額も比較的小さい金額の資金(100万円以下)が多いですね。
属性的なことで言えば、この運転資金は経営が安定している内は「固定費」として一定ですから、見通しの利きやすい資金と言えます。
例えば、人件費に関しては、社員の頭数の分だけ毎月必要になりますし、仕入れ資金に関しても、大きな変革の時でなければ売り上げも安定していて、その分の仕入れを繰り返すだけですので、一定です。
私のところに相談にいらっしゃる方で、「融資を断られたからどうにか資金繰りをする方法はないものか?」という方がいました。
その方は、長年付き合っている取引銀行に、追加融資の申し入れをしたそうです。
が、結果は否決。
「どのような形で融資金の申し入れをしましたか?」と私が伺ったところ、この「運転資金」の名目で申し入れをされていました。
銀行から見ると、運転資金というのは完全な固定費ですから、運転資金を借金しなければ回らないというのは、かなりの経営危機と映ります。
それは、先ほども申した通り、運転資金は見通しの利きやすいものだからです。
個人の借金で言うところの、「生活費」にあたります。
借金の借り入れの理由が「水光熱費を払うため」や「食費が足りなくて・・・」というのは、かなりの生活難なんだな…と映りますよね。
あなたの会社は、銀行からまさにこのような印象を受けているということになります。
「運転資金」で追加融資を受けることはほぼほぼ不可能に近いのです。
設備資金とは?
設備資金というのは「設備投資のための資金」を指します。
この資金の特徴として、運転資金に比べて金額が大きくなります。
例えば、建物などに代表される固定資産の取得は、金額的に大きなものになりますね。
それから、新事業への参入を計画していて、新機材を導入する場合など、数百万円単位の設備投資を行うケースです。
それから、新事務所への移転計画、新店舗の出店計画など・・・これらが設備資金となります。
これらは、銀行融資が受けやすい部類に入ります。
銀行は、あなたの会社の現在の経営状態をバランスシートで確認し、数年に渡って安定した業績を出していることを確認すると、さらに会社を大きくするための前向きな借金として貸し出します。
稀に、このことを利用して、運転資金が足りないのに、「設備投資」の名目で融資を受けようとする経営者の方がいらっしゃいますが、結論を言いますと、絶対にバレますのでやめたほうがいいです。
設備投資は、必ず購入したことを証明する必要がありますから、設備購入の領収書はもちろん、契約書や登記簿謄本の提示を求められる場合もあります。この辺りは、ごまかしが効かない部分ですから、最悪の場合、これまでに融資を受けた資金まで全て一括返済を求められる場合もありますから、絶対にタブーです。
どのように色分けをするのか?
資金の色分けをする際のポイントは「期間」です。
上述した通り、「運転資金」は支払いサイクルが短いです。しかも、割賦では支払いません。
比較して、「設備資金」は、銀行融資などを受けつつ、割賦で支払いをしていくものがほとんどのケースです。
余談ですが・・・
キャッシュが多分にある会社の場合はキャッシュで買うこともありますが、私はこのことはお勧めしてはいません。
会社の経営状態が良い場合ですと、銀行も貸したがりますし、その分、金利交渉もいくらでもできます。
返済期間が短くとも、1〜2%ほどの金利で融資を受けられる場合もあります。
そうなると、経理上大きなメリットがあります。
まずは、設備本体の減価償却費で節税することができますし、さらに、銀行融資による金利も計上することができます。
ローンは嫌いだから!という社長は多いですが、計画的にキャッシュを動かしている社長は、手元のキャッシュを多く残すようにしています。
どうしても、キャッシュでしか取り組みができない案件も出てきますし、値踏み交渉できるタイミングであれば条件の良い融資が受けられるからです。
さて、本題へ戻ります。
キャッシュの色分けは、期間がポイントと言いましたが、まずは「運転資金」と「設備資金」に分けましょう。
切羽詰まった経営者は「運転資金が足りません!!」と言いますが、実際には足りないのは、運転資金ではない場合が多いです。
冷静に考えてみると、設備資金の返済を優先させたから、結果的に運転資金に当てるキャッシュがなくなっているケースが殆どです。
相手が銀行だから、慌てて振り込みをしていますが、実はその設備資金の返済計画があなたの会社とマッチしていないのではないでしょうか。
『工場を建設するために銀行から3年返済で資金を借りて資金をまかないます!』
このケースを考えてみると分かりますが、この社長は銀行との面談の際に5年、10年という期間で返済をしていくと、金利が予想以上に多いことに気がつきました。
「どうせ頑張って回収するのに、こんなに金利を払うのはもったいない!」
と、ちょっと頑張れば返済できそうなくらいの返済額を設定し、その返済期間が3年ということになったそうです。
ですが、その返済金額、その時は“ちょっと頑張れば返済できた”くらいだったものが、少し経営の傾きがあったり、取引先から売掛金のリスケの申し出があっただけで、ギリギリどころか完全にアウトな金額になってしまうというわけですね。
まずは「運転資金」と「設備資金」を色分けし、さらに「返済期間を短くすべき設備資金」と「長期スパンで返済していく設備資金」の2つに分けることが重要です。
無理な返済計画というのは、結果的に信用を失ってしまいます。
それは、銀行からの信用もそうですが、あなたを慕っている社員からの信頼も裏切ることになりかねません。
返済計画を立てるときには、冷静に判断をするようにしましょう。
そして、冷静な判断をするために、普段からお金を色分けする癖をつけておきましょう。
まとめ
と言うことで今回は、お金の色分けをして資金を把握する手法についてお伝えしました。
あなたは、キャッシュフローが健全な会社と、心不全寸前な会社、どちらを所有したいですか?
もちろん、相当なもの好き以外は前者を選択するでしょう。
多くの経営者の方は、資金繰りの必要に迫られると冷静さを欠いてしまい、目先の資金繰りの方法に飛びついてしまう傾向にあります。
ですが、資金繰りというのは絶対に失敗ができない仕事の一つでもありますから、
あなたは、目の前の手法一つに絞るのではなく、様々な資金繰りを手数として持っておくべきでしょう。
銀行で追加融資を受ける際には金利5%以下で組むようにしてください。
それを超える場合には、「悪い借金」として分類できます。
5%以上でしか借り入れできない場合、私がお勧めする手法は「ファクタリング」です。
あなたの売掛債権を売却するという資金繰りの手法です。
様々なファクター(売掛債権買取業者)が存在しますので、数社を比較するようにしましょう。
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