今回は、社長と会社の財務の話をしても、なかなか噛み合わない!!という経理担当の方へ向けての記事を書きます。
不動産管理業で経理をやっています。
会社の業績や、資金繰りについて、社長と打ち合わせをする機会が多いのですが、なかなか社長と話が噛み合いません。
決算書などの数字を合わせて見せた上で、しっかりと現実味のあるお話をしているつもりですが、
利益と資金の動きの違いを社長にうまく説明するためには、どうしたらいいでしょうか??
経理担当者と経営者のミゾはなぜ起こるのか?
実は、この質問のようなことは会社内の経理担当者と経営者の間ではよくあることです。
経理担当者は、複式簿記に基づいて資金の動きを見ます。(そして、それが専門性が高く、間違いがないとも考えている傾向があります)
一方、経営者はというと・・・
お金の入金・出金の事実に基づいて話をします。
実は、資金繰りの基本は社長の“入金・出金の事実に基づいて行う”という「家計簿感覚」が正解なのです。
これは、多くの経理担当者がつまづくポイントでもあります。
上述した通り、経理担当者の方が簿記を駆使して数字を見ていますし、一見理にかなっているように思えますね。
社長は、経営者とは言え、経理のプロではないですから、あなたの方が会社の数字に関しては把握しているようにも思えるかもしれません。
では、なぜ、一見素人感覚のようにも思える「家計簿感覚の経理」が必要になるのでしょうか?
まず、社長が言っていることを理解するためには、どのような場面で資金が増減するのか?を知る必要があります。
さらに、財務諸表(決算書)の中には、資金的な情報も詰まっているので、それを読み取ることによって、資金繰りの知識の幅が広がることになります。
では、一体どのような場面で、資金が増減するのでしょうか?
資金が増加するアクション
まず、資金が増加する事実というのは、入金が早くなるアクション、もしくは出金が遅くなるアクションが起きた時です。
それを決算書内で見ると、3つあります。
- 資産の減少(現預金以外)〜売掛金の回収・棚卸資産の圧縮・減価償却など
- 負債の増加〜買掛金の増加・未払金の増加・借入金の入金・引当金の繰入れなど
- 資本の増加〜剰余金の増加・増資
せっかくなので、一つづつ解説していきましょう。
① 資産の減少(現預金以外)〜売掛金の回収・棚卸資産の圧縮・減価償却など
現預金以外の資産を現金化することにより、ムダな資産の滞留(キャッシュの塩漬け)を防ぎ、効率よく資金を回す動きになります。
決算書上では、一見会社資産が減り、体力や金融機関からの信用を目減りさせる動きに見えますが、塩漬けされていた資本を解凍し、効率よく
キャッシュにする動きは資金繰りの観点から見ると、とても有効です。
② 負債の増加〜買掛金の増加・未払金の増加・借入金の入金・引当金の繰入れなど
財務的な観点から見ると、誤解を招きやすいポイントです。
しかし、負債の増加は資金繰りの観点から見ると、恩恵を受けることができるポイントなのです。
例えば、今月の買掛代金を1ヶ月先延ばしにすることにより、その分のキャッシュは会社に溜まり結果的に流出を防いでいます。
結果的に、外部から資金を調達してきたのと、同じ効果を得ているのです。
また、借入金の入金は感覚的にも理解しやすいですが、キャッシュが潤うので、資金に余裕ができます。
③ 資本の増加〜剰余金の増加・増資
ご存知の通り、資本金は返済不要のキャッシュです。
これが、増加するということは、資金繰りにいい影響を与えますね。
資金が減少するアクション
では、次に資金が減少するアクションについてお話ししていきます。
これらは、すべて先ほどの「資金が増加するアクション」の逆のことになりますので、簡単にいきます。
- 資産の増加(現預金以外)〜売掛金の増加・棚卸資産の増加・設備投資など *1
- 負債の減少〜買掛金の支払い・未払金の清算・借入金の返済など *2
- 資本の減少〜剰余金の減少・原資
*2>買掛金や未払金の支払いのため、資金が流出したことで、資金繰りに悪い影響を与えます。
まとめ
と言うことで、今回は、経理担当者が頭を悩ませる資金の増加と減少についてお伝えしました。
お話ししてきたように、そもそも、経営者である社長と、経理担当者であるあなたの「資金」に対する概念に相違があります。
➡︎資金をキャッシュと見るか?
➡︎簿記的数値と見るか?
この違いだと言うこともできるでしょう。
経営者は、常にバランスシートを使い、会社のキャッシュフロー改善に努めます。
いかに、キャッシュを多く会社にプールしておけるか?がポイントなわけですね。
そして、経理担当者は、財務諸表を使い、会社の資本(体力)を管理します。
もちろん、どちらも会社にとっては必要なことなのです。
しかし、あなたが優秀な経理担当者であるならば、社長と話すときには頭を切り替えて、キャッシュポイントを念頭に話を進めることをお勧めします。
長期的な会社の財務を把握しているのは、間違いなくあなたなわけですから、社長の言い分を大きく受け止めつつ、長期的に良い方向へと導くことができるはずです。
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