中小企業の資金繰り基本概念を8つの角度から徹底解説をシリーズでお送りしていますが、ここでは税務のことにも触れていこうと思います。
まずはじめにお伝えしておきたいこと。
普通の人は「いくらお金を稼ぐか?」を考えますが、本当に重要なのは「いくらお金を残すか?」です。
事業をはじめたばかりの新米経営者の方からの質問に多いのが「減価償却費がわからない」という悩みです。
あなたが会社経営者の方で、同じように3年以内の新米経営者だったとしても、歴戦の経営者の方であったとしても、意外とややこしく、本当に理解できていますか?という質問に対して曖昧な返事を返してしまいがちな部分でもあります。
会社のキャッシュフローを考えた時に、減価償却費というのは間接的にではありますが、手助けをしてくれます。
本当に“デキる”経営者というのは、税務関連に強いですし、むしろ、率先的に関与していくことで得をしています。
ぜひ、あなたも税務を怪訝に扱わず、立ち向かってみてください。
減価償却費は「目に見えない費用」だからわかりづらい
電気工事業を営んで2年になる新米の経営者です。
減価償却費が資金の増加になると顧問の税理士さんから聞いたのですが、
正直意味がよくわかりません。
減価償却の仕組み自体もよくわかっていないと思います。
わかりやすく教えてください。
多くの経営者が最初に『?』になる減価償却費。
質問のように「減価償却費がなぜ資金の増加になるのか?」という疑問はとてもよく聞きます。
なぜ、最初理解が難しいのかというと、それは、「減価償却費が現金の支出を伴わない費用だから」です。
所有している固定資産が劣化したり、摩耗したりした分を一定期間に分けて費用として計上していく仕組みです。
固定資産については、取得時に大量の現金の支出をしているはずですから、その後「計上」する期間中は現金の支出がありません。
つまり、減価償却は計上した分だけ、資金をプールしていることになります。
資金調達の観点から見れば、結果的に、全く同等の効果があると言えます。
実際にキャッシュが動くのは、取得時のみという初動だけなので、その後、実際にキャッシュフローを生み出している様を目の前にすることはありませんから、そこが最初はややこしく、とっつきにくさがあります。多くの経営者が『?』を掲げるわかりづらさの原因でもあります。
減価償却費を計上することは資金の増加に「間接的」に貢献する
あなたの会社が減価償却費をうまく計上することで、資金繰りに苦労しなくて済むという効果を得ることができます。
具体的にいうと、会社の利益状況が収支トントンのラインであれば、「減価償却費」の金額だけキャッシュが余っている状態になるということです。
ですが、これはあくまで間接的なもので、税務の計上によるものですから、会社自体の経営状態そのものがひどい赤字であれば、この減価償却費を利用した資金調達はあまり意味を持たないということになります。
※まだ、イメージができなくても大丈夫です。詳しくはこの後にご説明しますから。
減価償却費とは、固定資産の耐用年数に応じて分配した費用です
あなたの会社の固定資産があるでしょう。
設備投資や、社用車、会社の建物の購入などの固定資産は、購入時に全額費用にはならず、時とともに劣化したり摩耗したりした分を使用できる期間に按分して計上していく見積もり計算なのです。
耐用年数は、財務省令別表の法定耐用年数に応じて決まっています。
参考:国税庁発行>耐用年数表
※現在国税庁公式の耐用年数表が閲覧できない状態ですので、上記リンクは当サイト内の耐用年数ページへ移動します(改変待ち)
それから、減価償却の計算方法には、主に定額法と定率法の2種類があります。(平成19年4月1日〜従来の減価償却計算方法が変わりました。具体的には、残存価格の廃止と250%定率法の採用ですが、もう既に10年近くが経ち関係ないように思えますが、これ以前に取得した不動産などから遡って計算する場合には、注意が必要です)
参考:減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年3月31日以前取得分)
定額法・定率法の減価償却の度合い
定額法・定率法どちらを取るかにより、減価償却の度合いが変わります。
例えば、100万円・耐用年数8年の固定資産を購入した場合の減価償却の例です。(現行の計算式)参照元:国税庁(減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分))
定額法の場合
取得年月日 平成19年4月1日 (3月決算法人)
取得価額 100万円
耐用年数 8年 定額法の償却率 0.125
(単位:円)
事業年度(至) | 償却費(償却限度額) | 償却累積額 | 未償却残高 |
---|---|---|---|
20.3.31 | 1,000,000 × 0.125 × 12 / 12 = 125,000 | 125,000 | 875,000 |
21.3.31 | 1,000,000 × 0.125 ×12 / 12 = 125,000 | 250,000 | 750,000 |
22.3.31 | 1,000,000 × 0.125 × 12 / 12 = 125,000 | 375,000 | 625,000 |
23.3.31 | 1,000,000 × 0.125 × 12 / 12 = 125,000 | 500,000 | 500,000 |
24.3.31 | 1,000,000 × 0.125 × 12 / 12 = 125,000 | 625,000 | 375,000 |
25.3.31 | 1,000,000 × 0.125 × 12 / 12 = 125,000 | 750,000 | 250,000 |
26.3.31 | 1,000,000 × 0.125 × 12 / 12 = 125,000 | 875,000 | 125,000 |
27.3.31 | 1,000,000 × 0.125 × 12 / 12 = 125,000 → 124,999 | 999,999 | 1 |
赤字の部分(125,000)が毎年繰り返され「定額」で計上されています。これが「定額法」です。
(注) 8年目における計算上の償却限度額は125,000円ですが、残存簿価が1円になりますので、結果として実際の償却限度額は124,999円になります。
定率法(250%)
取得年月日 平成19年4月1日(3月決算法人)
取得価額 100万円
耐用年数 8年 償却率 0.313
改定償却率 0.334
保証率 0.05111 (償却保証額51,110円)
※なお、各事業年度の償却費の額は償却限度額相当額とします。
(単位:円)
事業年度(至) | 償却費(償却限度額) | 償却累積額 | 未償却残高 |
---|---|---|---|
20.3.31 | 1,000,000 × 0.313 × 12 / 12 = 313,000 | 313,000 | 687,000 |
21.3.31 | 687,000 × 0.313 × 12 / 12 = 215,031 | 528,031 | 471,969 |
22.3.31 | 471,969 × 0.313 × 12 / 12 = 147,726 | 675,757 | 324,243 |
23.3.31 | 324,243 × 0.313 × 12 / 12 = 101,488 | 777,245 | 222,755 |
24.3.31 | 222,755 × 0.313 × 12 / 12 = 69,722 | 846,967 | 153,033 |
25.3.31 | 153,033 × 0.313 × 12 / 12 = 47,899 < 償却保証額51,110 → 153,033 × 0.334 × 12 / 12 = 51,113 | 898,080 | 101,920 |
26.3.31 | 153,033 × 0.334 × 12 / 12 = 51,113 | 949,193 | 50,807 |
27.3.31 | 153,033 × 0.334 × 12 / 12 = 51,113 → 50,806 | 999,999 | 1 |
このように未償却残高に対して、毎年一定の率の償却をかけていくのが「定率法」です。
まとめ
と言うことで、今回は、税務関連の「減価償却の仕組み」についてお伝えしました。
最初はとっつきにくいかもしれませんが、何度も触れていくうちに慣れてきますし、さらに仕組みを理解なされば、あなたの資金繰りのひとつの手法として武器となるでしょう。
ぜひ、挑んでみてください。
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